コンテンツへスキップ

隠居獣医の戯言-その4・ファミリーブリーダーの減少-

一昔前までは、セミブリーダーとかミニブリーダーとか呼ばれている犬の繁殖家がいました。私が知っているだけでも、その多くの人が現在、繁殖を止めています。

ブリーダーには商業ブリーダーとファミリーブリーダーに二分されます。後者が昔のセミブリーダーです。前者は、繁殖で生まれた子犬を販売し、それを生業とするブリーダーさん達です。

ファミリーブリーダーとは、欧米ではホビーブリーダーと呼ばれることもあるようで、名の通り、趣味か、もしくは副業とまではいかなくても趣味の延長で犬の繁殖を行っている人達です。

劣悪な環境で犬を飼い、繁殖犬ばかりか生まれた子犬たちにも苦痛を与えるブリーダーさんも一部にいたのは事実ですが、ファミリーブリーダーさんは心から犬が好きでたまらないという人たちで動物虐待をするような人は殆んどいませんでした。

それでも交配料やフード代、その他諸諸経費が嵩みますから、生まれた子犬を商業ブリーダーさんを仲買として買ってもらうということで収入を得ていました。一部の子犬は、ファミリーブリーダーさんの知人などに直販していたこともありました。

そのファミリーブリーダーさん達が短期間で大勢が繁殖から手を引いてしまったので、前回のグラフのようにその数が激減したのです。

趣味の延長とちょっとした小遣い稼ぎのファミリーブリーダーさん達は、なぜに好きな繁殖を諦めざるを得なかったのか?

それには動物愛護管理法という法律が関係しています。この法律は議員立法で、平成11年、平成17年、平成24年、令和元年に改正されており、改正の度に犬や猫にはもちろん愛護的なのですが、管理者であるブリーダーさんには手厳しいものになりました。

その現状はどういうものでしょうか。まずは、ブリーダーさんからみた動物愛護管理法の改正の経緯を見てみます。

平成24年(2012年)9月:動物取扱業が「第一種」と「第二種」に分類され、前者は「動物の取扱業を営もうとするもの」で「登録」が必要であり、後者は「飼養施設を設置して動物の取扱業を行おうとする者」で「届出」としました。(何のこっちゃですね)。

これじゃ誰も分かりませんから流石に所轄の環境省も施行の4か月前の2013年5月、第一種は「営利を目的として営もうとする者」、第二種は「第一種以外の動物取扱業」と定めました。(これでも何のこっちゃですが)。さらに第二種で届出が必要となるのは、犬の場合は飼養または保管する頭数が10頭以上の場合となったのです。(9頭以下は「届出不要)。(これまた動物愛護なのに「保管」の文言ですからね・・・・・・失笑ものです)。

ここで問題は、この時点でファミリーブリーダーは第一種の扱いとされました。第二種は動物愛護団体(里親探し)やシェルター(虐待からのシェルター)、公園などでの非営利の展示が含まれます。

さらにファミリーブリーダーには次なる試練が待っていました。現状は、自治体に多少の差異はあるかもしれませんが、「ファミリーブリーダーや、自分はブリーダーであるという自覚のない飼い主であっても、年2回以上※、子犬を繁殖させることは『業』とみなされ、有償・無償の別を問わず登録が義務化されている」のです。※「年間2頭以上」または「年間2回以上」の自治体もあるようです。

(おい待てよ)一般人が雄犬1頭と雌犬1頭の計2頭を飼育していて、彼らが交配して生まれた子犬が3頭いたとします。1頭は自分の家に残し、他の2頭は友達や親戚に無償で譲渡したとします。改正動物愛護管理法では、これも立派な「業」なのです。

かつ登録の義務が発生することになります。もしかしたら税務の対象として睨まれることになるやもしれません。(いくら犬が好きでも、こんな面倒くさい、べらぼうな法律にはついていけません・・・・・・と考えるのも当然でしょう)。

欧米はじめ海外では犬の頭数は増え続けています。なぜなら日本のような悪法はないからです。

以上の内容は、「日本から犬がいなくなる日」(林 良博・時事通信社)を引用・参考としました。

次回につづく。

先頭へ