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1月24日(土)-屋号の無い日本酒バー-

 昨夜は、とあるビルの4Fにある「屋号の無い・知る人ぞ知る居酒屋」へ出かけた。出入りの薬問屋との「二人新年会」である。階には10軒ほどのスナックがあるが、この店だけ看板に屋号が書かれていない。「舟歌」ではないが、白々と灯りが灯っているだけである。
 店主は宮崎には珍しい気合の入った、料理人気質をプンプンと漂わせた40代後半の板前さんである。「看板は要らない」というだけあって、腕前は超一流である。銀座で通用する数少ない宮崎の料理人であることに疑う余地はない。
 先ずは「涼冷」の生ビールを一杯。次いで、寒夜なので純米酒の「熱燗」を一合。続くは、宮崎焼酎が入り、より熟成された陶器から、客自らが注ぐ湯割り。ここらで、小生の脳細胞と肝臓はにわかにウォーミング・アップされ、口腔粘膜と食道括約筋、舌は仄かに潤い、胃粘膜は馳走を受け入れるに足りうる消化液の貯留に準備万端、整った。
 カウンターには「本日のおススメ食材」が整然と並べられ、カウンター内の背壁には、墨での店主直筆のメニューがギッシリと書かれてある。「先附」は「鮑の塩蒸し・青海苔・湯掻き筍の酢味噌・里芋・魚皮(コラーゲン)煮」。今回は刺身の「向附」は飛ばして、最初に目に留まった「日向蛤」の「椀」もの。モノが大きいため、ドンブリ風の器で出されたが、それには引け目を感じさせない十分に霞がかった「コハク酸」の出汁タップリの汁。木の芽が光った。今回はコースでないので「八寸」も飛ばして、次は「焼物」である。「ヤング・コーン」と「空豆」を頂いた。一足早い「旬」、いや「春一番」であった。もう一丁、カウンターで灯火を点しているのが「真鱈の白子」。表面に狐色の焦げ目が付くようにと、生意気にも注文をつけたが、意に適った至福のアツアツ・コクコクの絶品であった。さらなるもう一丁は、これも最初から気になっていた大振りの「カサゴの煮付」。小生の好物の牛蒡と豆腐がきちんと添えられていたから、ウレシイではないか。カサゴは〆て約1昼夜、イノシン酸(ヌクレオチド)はじめ旨味アミノ酸が遊出した食べ頃合の、これまた絶品であった。〆は「御飯」ものか。中途から「鯖すし」と心に誓って決めていたが、度の過ぎた本酒の暴飲のためか、「鯖すし」の刻印がいつの間にか、脳ミソから消え失せていた。今日の今に至っても心残りである。
 店には、客人として、以前ラジオの「ペット相談」でお世話になったアナウンサーが居られ、いつもにも増しての「楽酒」であった。近々のラジオでの「ペット談議」を約束しての、「握手」での御開きとなった。連れも終始、美酒・笑顔で、ケッコウなひと時であった。
 「美酒、美肴、美人」に乾杯。
 屋号の無いと思われたこの店には、実はというか、当たり前だが、屋号があった。もらった領収書に「Japanese Sake Bar ○○○○」とスタンプされていた。これも高尚な「ギャグ」だ。追加で、この店は器にも凝っているほか、酒はグラスから受け皿に零れるまで注いでくれますぜ。

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