毎週月曜日の夜8時からは、「余程の急患や緊急手術」以外、何があろうとやはり「エキサイトマッチ」(WOWOW)を見ないと気が収まらない。本日の「タイムリー・オン・エアー」は視聴者が選ぶ年間ベスト10に必ずや登場するであろうナイス・ファイトであった。試合はWBA世界ウェルター級タイトルマッチで、チャンピオンはアントニオ・マルガリート(メキシコ、30歳)と挑戦者はシェーン・モズリー(アメリカ、37歳)。ファイターのマルガリートは2008年7月26日、無敗で最強の「名勝負製造機」と言われたボクサータイプでチャンピオンのミゲール・コット(プエルトリコ、1980生)を11回TKO(テクニカル・ノックアウト=technical knockout)で敗り、ベルトを奪取した。前評判ではコットがかなり優勢であった。挑戦者のモズリーは2007年11月10日、当時のチャンピオンであったコットに3-0の判定で敗れている。正しく三つ巴である。試合前のオッズ(odds)は3.5:1でマルガリートの優勢であったが、結果はモズリーの一方的な試合で、9ラウンドKO。年齢的にも脂の乗った強打のチャンピオンは「チャンピオンになった燃え尽き症候群(解説のジョー・小泉談)」のためか集中力を欠いた貧打で、モズリーの左のストレートに近い鋭いジャブと右ストレートと左右のフック、右アッパーに終始圧倒された。KOラウンドではワン、ツー、スリー、フォー、ファイブ・・・・、と滅多打ちのレフリー・ストップ(TKO)。経験とスピードの勝利か。
モズリーは、あの「ゴールデンボーイ」こと、ボクシングをあまり知らない人でも一度は耳にしたことがあろう6階級制覇のオスカー・デ・ラ・ホーヤ(メキシコ系アメリカ人、1973生)と2度対戦し、2度とも倒した男である。昨年の9月28日にはWBAインター・コンチネンタル・S・ウェルター級王座決定戦でリカルド・マヨルガ(ニカラグア、1973生)を最終回の12回、2分59秒でノック・アウトした。残り1秒の劇的瞬間であった。
ついでにもう一勝負。昨年12月6日(米時間)、前出の6階級制覇のデ・ラ・ホーヤと我らが「東洋の星」で4階級制覇のマニー・パッキャオ(フィリピン、1978生)との一戦。これは年に1度あるかないかの「生放送」。2階級の体重差があることから、ボクシング関係者や評論家の間でもデ・ラ・ホーヤの優勢がゆるぎなかった。が、蓋を開けると、結果はこれまた、劣勢が伝えられたパッキャオのスピードとパンチ力が圧倒。8ラウンド終了TKOで、デ・ラ・ホーヤは救急車で病院へ直行。小生は現・世界ボクシング界の2巨頭である両者の猛烈ファンであるが、どちらかと言えばパッキャオ贔屓である。デ・ラ・ホーヤの言わば無惨な試合に、リプレイにも目が当てられず、翌日(月曜)のいつもの時間の再放送は見なかった。
「ジャブを制する者は世界を制す」。これは右利きであれば左の軽いストレートのことをいう。サウスポーでは右のそれをいう。こつこつとジャブを当てては相手の出鼻を挫(くじ)き、試合の主導権を握って、徐々に相手を弱らせる。丹念に丹念に「ボディ・ブロー(body・blow)」を重ね、相手の突進力を殺(そ)ぐ。時に必殺の「レバー(liver)・パンチ」で息を止めさせる。「ヘッド・スリップ」や「ダッキング」(ducking、頭を下げたり上体をかがめたりして、相手の打撃をかわすこと)を使って、相手のパンチを間一髪で避(よ)け、ストレート・パンチを撃ち抜く。顎先に「アッパー・カット(upper・cut)」をあて、脳を上下に大きく揺らす。肘を曲げての大振りの側頭部への「フック=hook」。
とある世界タイトルマッチ。11回まで毎回ポイントを取られ、皆が負けを確信している、その瞬間、右アッパーが顎先にヒット、一瞬怯(ひる)むチャンピオン、透かさずの左フック、渾身の止(とど)めの右ストレートが炸裂。セコンド(second)の絶叫。映画「ロッキー」のエイドリアンが目に浮かぶ。
「人生コツコツが一番」。「人生一寸先は闇」。「人生諦めたらあかんで」・・・・・「人生いろいろ」あるが、小生にとっは正しく「ボクシングは人生」。正直で誠実なジャブとボディ・ブローな毎日、日に一度のストレート・ジャブ、躓(つまず)きながらの右アッパー、意表を突く右フック、しつこ過ぎるクリンチ(clinch)も忘れない。そして、なんと言っても常に機会を窺(うかが)うカウンター・パンチ。ボクシングを観ると、本当に元気付けられるから、ありがたい。もちろん、「ロー・ブロー(low・blow)」や「ラビット・パンチ(rabbit・punch)」、故意の「バッティング(butting)」は人生を狂わす御法度もので、禁物。
あなたの人生は「ワン、ツー、スリー」のパンチか、「ジャブ、ボディ・ブロー、ストレート」か、「アッパー、フック、カウンター」、「カウンター、ワン、ツー」、最初から最後まで「カウンター」狙い、・・・・・人生いろいろだが、ボクサーの如くに命を賭すことが大事。