今日は正しくの秋晴れで、長袖シャツでも心地よく、1年で最も清々しい時季である。午前中は2週に一度の「ペット・ラジオ診察室」の収録日である。終わってみるに、ハタと用のないことに気付く。こういう日は、無用の長物風に、チャンネルと寝ころんでテレビを見るのが贅沢である。梅雨時にシトシトと降り続く雨音を聞きながら、ひたすら寝ることに匹敵するくらいの幸福感がある。
そうは言っても、何かないものかと思案するに、数日前読んだ毎日新聞の社会面の記事を思い出した。中見出しが「日航 きょう省エネ飛行」で、「機内容器軽量化 航路も工夫 ドラム缶27本分節約へ」との小見出しが続く。内容は、「日本航空が、ホノルル発関西国際空港行きのボーイング747-400型で現時点で可能なあらゆる省エネ対策を取り、どれだけ燃料が節約できるか検証する。」とのことだ。具体的には①直線状の巡航経路(燃料削減量570リットル)、②最も燃費効率のよい巡航高度(同490リットル)、③最新の風の予測を基に効率の良い経路を選択(同455リットル)、④機内誌のページ数減で1冊当り60グラムの軽量化、⑤スプーンやフォークの柄を薄くして1本当たり2グラムの軽量化、⑥ワイン容器の変更で計30リットル削減。その他、駐機中の工夫などがある。
そこで問題である。これらがすべて上手くいったとして、どの位の燃料が節約できるのかである。記事によれば、燃料消費量で約5%にあたる5,362リットルで、ドラム缶に換算して27本分であり、これは二酸化炭素排出量で1万3,140キログラムの削減になるという。目標通りなら、1キロメートル当り1.99キログラムの削減だ、そうな・・・・・。
13,140÷1.99=6,603であるから、ホノルル間は6,600キロメートルの距離である。5,362リットルが5%の削減であるから、飛行(フライト)に必要な総燃料は107,240リットルの計算となり、ドラム缶で約536本分である。因みにドラム缶は200リットル入る。
手元にあるANAの機内雑誌「翼の王国」の10月号を見ると、ボーイング747-400は全幅64.4m、全長70.7m、全高19.4m、飛行距離12,370km、座席数287/323席(2009年9月1日現在)とある。こんなに大型の旅客機が6千キロ以上も飛ぶには、一体如何程の燃料費が掛るのかと考えるのは、普通人であろう。そこで、ジェット燃料を調べると、ジェット機の燃料はケロシンと呼ばれるもので、原油から灯油を精製する時に同時にできるらしい。灯油に良く似ていて、価格も同じと考えて良いとのことだ。ジェット燃料は燃えやすい高温・高圧の空気を用いるため、ガソリンのような爆発性・揮発性は必要なく、ガソリンではかえって危険である。現在の灯油価格が仮にリットル70円とした時、70×107,240=7,506,800となので、ホノルル-関西国際空港間の燃料代は約750万円の計算である。いや、これは小生が想像していたよりは高い。燃料費だけをみた場合、300人の満席でも1人当り約2万5千円が実費として掛る計算だ。
日航は有利負債だけも1兆円を超え、利子だけで年200億円だというではないか。毎日のように再建策が報じられ、メガバンクの借金棒引きも検討されている。再建策の一つが5千人か何千人か知らぬが、人員削減である。ここでも計算して見るに、昔は親方日の丸の日本航空であるからして、5,000(人)×600万円(平均給与)で、人員削減による年間支出が300億円抑えられることになる。省エネ飛行による1回のホノルル-関西空港間のフライトで浮かされる経費は、70円×5,362リットル=375,340円である。そこで300億円を375,340円で割ると、約79,928回のフライト分となる。こらまた恐ろしげな数字である。会社にとって人件費の占めるウエイトの大きさが改めて分かる。
るゆりと寝ようかと思ったが、計算している間に脳味噌が覚め、そしてそのうち「ジャンボ熱」も冷めてきたので、お開きとしよう、日航の再建を期して! さー、ニシタチだ。
最後にもう一言。企業、特にJALのような大企業は決算で黒字を出し、税金を納める社会的責務がある。雇用と、非雇用者の納税だけで責任を果たしているとは、とても言い難い。大阪の橋下知事の言うように、国の来年度予算編成では人件費削減の本格的な論議がなされる筈だ。①税収は減る、②国債発行はしない、③行政サービスの質の低下は避けたい、・・・となれば、独立行政法人の統廃合や民営化、公益法人や特別会計の問題、天下り、・・・そして公務員数や給与の削減しかない。これは国に限ったことではなく、全ての自治体に共通する問題である。県でも今すぐの租税の増収は望めないし、国からの交付金も増える予定もない、・・・。公共事業予算が減った分だけ、県の土木事務所の職員は削減されたのか、・・・などなど合点が行かぬことも多々ある。先の10月6日に、宮崎県人事委員会が提出した「宮崎県職員の給与等に関する報告及び勧告について」によると、民間の給与(378,521円)と県職員の給与(は379,523円)の差は1,002円で、特別給(ボーナス)は民間が4.13月、県職員が4.45月であり、県職員の平均年間給与を13万円引き下げるように勧告している。ここでまた一言。民間会社員は土曜日や日曜日も、運の悪い社員は盆・正月も会社や顧客に呼び出される。5時に終業してニシタチで「疲れ止め(ダレヤメ)」をして帰宅することなどあり得ない。年20日間の有給のある会社がどれだけ存在するのだろうか。民間と公務員を比較すること自体がナンセンスである。民主党がこれからやろうとしていることの一つの目玉は、人件費削減にある。3分の1は削減できるというのが、国民の一般論である。減給が嫌ならば、業務の効率化、行政の簡素化、縦割り廃止、旧態の条例廃止、県に約60有ると言われる天下り(先)の撤廃など・・・・・を英断をもって敢行することが必須である。知事をはじめ各自治体の首長も、この問題が霞ヶ関という対岸の火事ではないことを認識し、自城の改革に勇往邁進すべきである。役所もJALも同じに思えてならない。
※灯油1リットルの値段は近場のガスステーションのものです。空港で給油するジェット燃料が実際いくらかは知りませんが、仮に半値だとすれば、上記の計算値は当然ながら半分あるいは倍となります。