犬猫の肥満が寿命に影響することは、「ペット・ラジオ診察室」で話した。肥満が心臓病、特に僧帽弁閉鎖不全症による心不全を憎悪させること、乳癌のリスクが高まること、関節炎が誘発され延いては歩行困難となること、などなどが寿命を短縮させる。これについては「ガッテン、ガッテン、ガッテン」である。
今日の宮日新聞の4ページの総合面「太りすぎより『やせ』短命 40歳の余命で6年差 東北大研究グループ」を見て、半信半疑であったことが、もしかしてに変身。
先だって、旦那のメタボに悩む知り合いの女性が、「かかりつけの先生(医者)は無理に痩せたらいかん。心臓の筋肉まで衰える、と言うのよね。何かおかしいよね。本当じゃろけ。」と、これまたゼロ信全疑で話していたのを思い出した。記事の内容を要約すると、BMI(体格指数=体重㎏を身長mの2乗で割る)に基づいた4つの肥満度で比べると、①「太りすぎ」、②「普通」、③「肥満」、④「やせ」の順で男女とも「太りすぎ」の余命が1番に長く、「やせ」より平均で6年長生きする、というものだ。「やせすぎると細胞の機能低下などで血管の壁が破れやすくなるなどして、循環器疾患による死亡リスクが上昇するとの報告があるし、栄養不足が体の抵抗力を減少させるため、やせでは肺炎などにかかるリスクが高まるとの研究もある」と結んでいる。
小生も以前から、犬の場合も肥満気味のほうが寿命が長いのではないかと、常々6信4疑していたので、この記事を見るに8信2疑に変わった。もちろん心臓病や気管虚脱などの循環器・呼吸器疾患のないことが前提だ。おまけに犬や猫では善玉コレステロールが悪玉の何倍も多いときているから、血管がプッツンすることもヒトに比べたら格段に少ない。
「メタボは悪」。この類の「嘘」は少なくない。現在医療や獣医療で頻用されているガス麻酔薬の「イソフルレン」は数十年前の開発当初、ある外国の有名な麻酔科医が「この麻酔薬は○○○○○に比べたら劣る」という鶴の一声で、20年前まで使われなかった。まさに眠った薬であったのだ。
血糖値の正常値を1下げるだけで医療界では「100億」の金が動くとされる。目の前のカステラや羊羹を我慢し、時には命懸で食らう。ビールがもう一杯呑みたいが、棺桶が頭に浮かんで自重する。世のメタボ親仁さん、今日から自信をもって、好きなものはそれなりの量をそれなりの間隔で召し上がれば大丈夫ということですよ。週に1度はステーキも良いし、プリン体の多いホルモンもいける、月に2度はフルーツパフェもOK。旨いものを食らういっときのために、適度な有酸素運動を心がける。医者の言う事ばかり聞いていて、旨いものも喰えず呑めずのまま「やせ」で死んでは、洒落にならない。
最後に、肥満の犬猫が病気になった時、それまで蓄積された脂肪のお陰で、彼らもなかなかあの世に行きませんよ(もちろん病気によりますが)。これは全信ゼロ疑。「6歳の余命で○年差、BCS(Body Condition Score)との関係」という犬猫の論文がでる日も近いことを願おう。