コンテンツへスキップ

12月1日(火)-狂犬病注射料金の仕分けの仕掛け-

 今日から師走。きのう、小学高学年の女の子供を連れた御婦人が来院した。おとといが日曜なので、「きのうは日曜参観だったの?」と尋ねると、「新型インフルエンザで学級閉鎖です」と返ってきた。先生が走らないと用を足せないほど多忙なので「師走」というが、最近の先生はどうもそうでないようだが・・・・・、この話題はいずれ書くことにする。「飲酒の善し悪し」は「酒は涙か溜息か・・・・・」で一休みとしょう。
 きょうは狂犬病の金の流れについて御披露する。鳩山内閣の「仕分け」作業が注目を浴びている昨今、われわれの周囲には暴かれなければならない実態がわんさとある。獣医業界は自由診療であり、狂犬病注射料金も例外ではないが、多くは獣医師会が料金を統一しているのが現状である。東京や大阪では獣医師会に所属しない動物病院や獣医師も少なくなく、それも増加傾向にある。しかるに、狂犬病料金も格安の病院が存在することになる。
 多くの自治体(都道府県)では狂犬病注射料金を3,000円に設定しているが、この全てが病院の収入にはならない。内訳は550円が手数料(鑑札代、広報、事務手続きなど)として保健所(宮崎市では中央保健所)に、1,100円が県の獣医師会に上納される。残った1,350円が獣医師や動物病院の収入となる。それも法人の場合、法人税540円を払うと、獣医師の手元に残るのは810円である。検温や聴診、健康チェックをしてからの注射であるから、1,350円は通常の診療料金に比べて割に合わないので、別途診察料を貰う病院も少なくない。獣医師会に所属している動物病院は3,000円を一旦保健所に持参して、保健所が獣医師会と各獣医師の銀行口座に振り込む。保健所が獣医師会の業務を手伝っているとも取れる内容である。公務員(保健所の職員)が一団体のために時間を割くことは違法でないのだろうか
 問題は獣医師会の1,150円である。狂犬病の注射液が1バイアル10ml入りで4,085円で、1頭に1mlを注射するから、1頭当りの注射液料金は408円(税込)である。21G針付き2.5ml注射ポンプは1本当り約19円80銭(税込)である。1,100円からこれらを差し引くと約672円が、獣医師会の純収入という計算になる。しかし、なぜかしら、県獣医師会発行の16年度収支書では1頭当たりが830円と記載されているから、注射液や器材の大量調達で浮かせているのであろう。平成16年度の宮崎県内での狂犬病注射頭数は52,401頭であり、830円を掛けた43,492,830円が狂犬病に関する総収入と、記載されている。同じく平成16年度の支出の決算額が63,334,392円であり、決算額に対する狂犬病注射料金の占める割合は、実に68.7%である。支出には事務局長(県の天下り先の一つ)や専属事務員(現在の仕事の質量からしてアルバイトで十分)の給料と退職金引当金(平成16年度の予算額は1,100,000円でなぜか決算額は923,800円)、会長など役員の手当て、旅費など種々雑多である。その雑多の中に、飲食代が含まれる狂犬病注射慰労会親睦会、あるいは動物慰霊祭と称してタダ飲み会を年数回やる始末である。獣医師をはじめ、県庁や役場の担当者が数十名出席する。それもホテルの一室を貸し切っての大散財であるから、恐れを知らない蛮行振りである。会費の要る二次会やその他の飲み会にはこの数分の1しか集まらないから、情けない。仮に、会場設定などで役員の意向がはたらくとすれば、これも浅ましい。 
 時代に即した獣医師会の存在意義を含め、事業内容を徹底的に洗い直し、新たな出立を目指すべきである。そうすれば獣医師の獣医師会離れも防げる筈だ。今回示した狂犬病の金の流れズルワルな役人的発想であり、愛犬家や正直な国民を愚弄した仕組みである。鳩山政権の生命線である「仕分け」は結構だが、狂犬病注射料金の仕分けだけは、即刻止めてもらいたいものだ。
 今も夜な夜な獣医師会の役員らがニシタチを徘徊し、狂犬病の収入をぶら下げて、行きつけの二次会スナックで大散財をしているとしたら、許せますか。
「怒りの不連続シリーズ」は、つづく

先頭へ