今季はメジロに会えないのかと思っていたが、10日くらい前から、落葉した紅葉・エゴの小枝や山茶花・楠の茂みで「チー、チー、チュ~ン、チュ~ン、キィキィ・・(実際はもっと複雑)」と忙しなく鳴き耽り始めた。
もう40年以上前のことだが、田舎では小学校に入ると「メジロ捕り」が冬の遊びのメインであった。他にも、田圃での「三角野球」、地下(ぢか)ぶちや高(たか)ぶちでの「鳥罠」(「ぶち」は鞭の意と思われる)、裏山での「住処(すみか)作り」(隠れ家的で温かい)、「石蹴り」、「缶蹴り」、「馬乗り」、「泥棒巡査」、「命中」(「めいちゅう」といいビー玉遊びの一種)・・・・・などいろいろあったが、今時分の遊びはやはり「メジロ捕り」であった。当時は小遣いはまず貰えないから、山で「鳥黐(もち)の木」(後述)の皮を鎌で剥いで、それを谷川に持って行き、小石を手に持ち石の上で皮を叩いて粘りを出す。粘着性は強くないが、鳥黐として何とか使えた。なんかの拍子で小遣いが入れば、村の商店街で本物の「鳥黐」を買う。これを青々とした梅の新木に薄く巻いて行く。一回使うと、捨てずに軟膏壺くらいの大きさのアルミ製の入れ物に戻して、何回も使う。
捕獲の方法は幾つかあり、過激なものは「石弓」(「いしゅみ」と呼んだ)でメジロを撃ち落とす上級生もいた。当時は至る所に柿木があり、数百羽のメジロが群れで熟した柿に集団で飛来した。メジロは2~3時間の間隔でまた柿木に戻ってくる習性がある。それを利用して、飛来前に数本の鳥黐を柿木の枝に仕掛け、飛来を茂みでひたすら待つ。普通は近所の数人の悪餓鬼達で遊ぶから、皆の鳥黐にメジロが掛かってから木に登りメジロを手にしないと喧嘩になる。鳥黐に掛かったメジロは宙づりになるから、直ぐに分かるが、早く掛かったメジロは暴れて鳥黐が羽にべっとりと付き、これが原因で死ぬこともある。最もスリルがある捕獲法は、「囮(おとり=媒鳥)」を使う方法である。これは鳴き声が綺麗でよく鳴く雄のメジロを「メジロ籠」に入れて山中の木に吊るして鳴かせ、まわりのメジロを誘(おび)き寄せ、籠の周りに仕掛けた「鳥黐」で捕ろうというものだ。メジロは雄と雌の「番=つがい」で行動するから、上手く行くと同時に2羽獲ることもあった。
メジロは腹の黄色い筋がはっきりと濃いものが、よく鳴き、よく耽(ふけ)ると信じていた。雄のよく鳴くメジロを持っていると、鼻が高かった。当時から「霞網(かすみあみ)」での捕獲は禁止されていたと思うが、その他の方法は規制が無かったのか、近所の大人や先生に咎(とが)められた記憶はない。随分惨(むご)いことをしたと、反省している。今我が家の庭に来てくれているメジロ達を見ると、当時を思い出しては心が痛む。せめてもの罪滅ぼしにと、蜜柑などの果物を木枝に刺し置く。
※熟した柿:田舎では熟し柿(じゅくしがき)と言った。
※耽る:囀(さえず)るの意。
※鳥黐(とりもち):モチノキ・クロガネモチなどの樹皮からとったガム状の粘着性物質。5~6月に樹皮をはぎ、これを秋まで水につけておいて、臼に入れて搗(つ)き、それを流水で洗う。これを3~4回くりかえすと出来る。江戸時代から熊野の山中が産地として著名。捕鳥・捕虫に用いる。とりもちのき[鳥黐木](広辞苑)
※メジロの分類:鳥綱・スズメ目・スズメ亜目・スズメ小目・ウグイス上科・メジロ科・メジロ属・メジロ種。(全長12cm前後でスズメより小さめ。日本で見られる野鳥のなかでは、ミソサザイ・キクイタダキに次いで最も小さい部類に入る)