▼人間が犬、猫につける名前の功罪については、昔から議論のあるところです。僕らの飼い主である獣医先生は、歴史物小説が好きなこともあって、われわれにつけた名前は皆、幕末などの有名な歴史上の人物に因んでいるのだな。歴代の諸先輩犬猫もそうだったようです。
二太郎「そうなんか、犬の僕なんか、二太郎とか、ニッタとかニタとか呼ばれるんだけど、その由来は何なんだろうか」
金之助「僕の場合は『吾輩は猫である』の作者の夏目漱石の幼名から来ていると教えてもらったけど。君の二太郎は、獣医先生の好きな作家の司馬遼太郎と池波正太郎と藤沢周平の『一平二太郎』の二太郎らしいぞ。この前も病院で患者さんに自慢気に話していたもんね」
▼ところでペットにつけないほうがいい名前があるらしいんですが、たとえばリンゴ(林檎)とかミカン(蜜柑)とかセロリとかマル(丸)とかブリ(鰤)とか・・・・・・果物と野菜とか魚の名前など日常生活でよく使う言葉ですね。
金之助「二太郎君は何か名前で戸惑ったことはあるかい?」
二太郎「うちの獣医先生はたまにであるが、俺の主人である奥方に『アンポン太郎』って罵っているから、それも大声で。その時は僕様が怒られているかとドキッとするな。そっちはどうだい。」
金之助「奥方は通常、金ちゃん金ちゃんと呼ぶからな、若いスタッフの前で呼ばれたときににゃ、スタッフのなんともはにかんだ顔が悩ましいであります。獣医先生は単に金とも呼びますが、何の意やら分かりませんがしょっちゅう金(かね)金(かね)とは騒いでいますがね。それはそれで今後のことで心配ごとがあるんだな。吾輩はテレビでサッカーなどボールがあっちこっち動くのが面白くてよく視るんだが、夏のオリンピックでサッカーに限らず、あちこちのテレビで『金、金、金・・・』と連呼されたら、困惑頻りかと、今から危惧しているんだな。」
▼付けない方がいい名前は分かりましたが、付けてはならない名前というのもあるそうです。
二太郎「そうそう、うちの獣医先生がある飼い主さんと話しているのを盗み聞きしたんだけど、その飼い主さんが新しく飼った子犬に旦那がマリと付けたそうなんだが、奥さんがある時、『あんたはマリを呼ぶときは私を呼ぶときよりも優しいのね。怪しいな、もしかして元カノじゃないでしょうね。よくあるらしいから・・・・・・』と、冗談交じりで少しもめたらしいですぞ。」
金之助「僕もその類の話を盗み聞いたはことがありますぞ。ある飼い主がめでたく結婚したのだが、新婦さんと共にやってきたのが彼女が結婚前から飼っていた犬で、なんとその名前が新郎の元彼女の名前と一緒だったという話なんだな。笑えないけど受けすぎないか、なあ二太郎君。」
二太郎「そうか、ペットの名前もよくよく考えて付けないといけないということだな。総じて我々の名前は、可もなく不可もない名前ということで良しとしなくちゃいかんと云うことだな。」
(おわり・2月上旬に書いていたものです)