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今週のつぶやき親仁・2020年6月28日(日)~7月4日(土)

●年齢が増すと、いくら巣ごもり生活と云えども、長編ものを完読するのは容易じゃありません。1巻500ページの5巻以上ものに挑もうとすれば、それなりの覚悟が必要です。文字通りの気力と体力が要るのであります。その中でも『源氏物語』は強者で、若くしても読破は至難です。むろん現代語訳もの(与謝野晶子、谷崎潤一郎、田辺聖子、瀬戸内寂聴など)であっても難解すぎるし、かつ光源氏の求愛シーンのワンパターンなのが支障となるのです。このたびの「親仁ギャグ」の『』の譚の延長ですが、わたし贔屓の作家、林望先生の訳文を紹介してみよう。

宮は、これでもかこれでもかと、せいぜい言葉を尽くして口説きかかるが、そのいちいちに答えることもせず、ただ躊躇っている玉鬘に、源氏はするすると近寄ってくると、傍らの几帳の垂絹を一枚だけひらりと引き開けて横木にうちかけた、その刹那・・・・・・。
 あ、ぽっと、光るものが・・・・・・。
 まさか・・・・・・、だれかが紙燭でも差し出したのかと、玉鬘は息を呑んだ。
 蛍、だった。蛍が光っているのだ。
 源氏は、この夕方に、たくさんの蛍を捕まえて光が漏れぬよう薄い帷子に包んでおいたのを、さりげなく、玉鬘の身の回りの世話でもするようなふりをして、突然に空中に放ったのであった。
 あまたの蛍は、呼吸を合わせるように、ふーっと光を明滅させる。その明るんだ瞬間、玉鬘は動転して思わず扇で顔を隠そうとしたが、間に合わない。
 記帳のむこうに、蛍の青白い光に照らされた玉鬘の真っ白な横顔が浮かび上がる。
 たいそう美しいその面差し・・・・・・。
 これこそまさに源氏の思うつぼであった。
」(林望 謹訳 源氏物語五 改訂新修 祥伝社文庫 pp16~17)。

と云った具合で、光源氏の人並外れた求愛の常套テクニックが延々と繰り返されるのです。読者はこれに耐えなければなりません。かつて、光源氏が関係をもった女性の数と間柄を調べたことがあるですが、その多さに中途で挫折したままです。〇州のドンファンだとか、亡き男優・〇戸〇の千人切りとか、今般の多目的トイレ愛用芸人とか、プレイボーイにも種類(タイプ)があるようですが・・・・・・果たして光源氏はドンファン型なのかカサノヴァ型なのか、すくなくともBではなかったようなので前者であったのでしょう。螢が飛び舞い過ぎてとんだ譚へ飛躍しましたが・・・・・・いまの若者も光源氏に負けじと、螢鑑賞に女性を誘って、源氏気取りで口説いては如何でしょう・・・・・・これで譚の”落ち”(女性を口説き落とせたか否や)になるやらどうやら。呵呵!!!

7月4日。

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