きょうはズボンを締めるベルトの話。(田舎ではバンドと言った)。ベルトの歴史は古く5千年以上も前からあるという。がしかし、ズボンを締める目的で使用され始めたのは100年余り前からという。それまでは呪術的性格にあった。「騎士たちがベルトについてゐる宝石のおかげで、武器にも火にも水にも敗けないことをあげる。」(マックス・フォン・ベーンの「ニ―ベルンゲンの歌」)。「人が狼になるには、狼の皮で作った紐(ストラップ)を巻けばいい、その紐には九つないし十二の孔をあけ、バックルを一つつける。(だから、つまりベルトである。)そしてバックルの舌(金属性の短い棒)をどの孔に入れるかで、変身の日数が決まる。第一の孔なら一時間だけ狼。第二の孔なら、二日間だけ狼。そして最後の孔なら、一年間、狼として生きることになる。しかしその皮紐をほどけば、たちまち人間に戻る、といふのだつた。」(フレイザーの「黄金の枝」)。「十九世紀の末、ベルトをズボンのまはりに巻くことを思ひついたのは、呪具を実用品らしく見せる絶好の発明だつた。」。たしかに余程ダブダブのズボンを履かない限りベルトは不要だ。世の紳士淑女がいったいいくつのベルトをお持ちなのだろうか。今親仁のを数えると多いのか少ないのか、9本。といっても2、3本を除いてただぶら下がっているだけで無用の長物だ。気に入って買った筈だが。現実には丸谷才一の書いているようにベルトは所詮装飾品ということの証明だな。出典参考:丸谷才一「猫のつもりが虎pp10-16『ベルトの研究』」。10月8日。