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8月2日(日)-健診と検診事情の四方山話-

 自分が健康診断を受けるとしたら、どんな項目を選ぼうか。最近放送された「ワールドビジネスサテライト」で、アメリカの医療事情があった。御存じのようにアメリカは日本のように国民皆保険ではない。このたびの「世界恐慌」で病院にかかれない人々もさらに増えたという。
 特集のタイトルは「病院不要? 変わる医療現場 小売店経営の簡易診療所 9年前に開始 1,000店以上に」というもの。ドクターとナースの中間に位置するナースプラクティショナーが「診療」に当るという。費用は病院の3分の1という。当然手術などはしないが、自分の気になる個所だけを診てもらい、必要なら血液検査などをしてもらう。気になるところの「とりあえず診療」とでも名付けようか。
 日本の医療の健康診断の実態はどうか。「癌家系」であれば、胃カメラや大腸カメラ、マンモグラフィーの検査に重点を置く。白血病ウイルスや肝炎ウイルスのキャリアーであれば癌の早期発見に努める為、定期的にチェックする。高血圧症や糖尿病、高脂血症や動脈硬化の持病やその家系であれば、それらが不安の種であるため、定期的な検診を受ける。健診や検診時は必要でないような項目も含め10も20も、場合によっては30項目の血液検査をする。「病院好き」や「持病持ち」の人は、病気が「早期発見」され、寿命が長いとされる、故である。
 「癌死」は今や死因の30%を超える。では、PET健診と検診を年に何回やれば「癌死」は避けられるのか。例えば、50歳の女性で胃カメラは年に1回、大腸カメラは3年に1回でいいのか。70代にもなれば、大腸も年1回になる。検診の1ヵ月後に癌細胞の増殖が始まったら、「あなたなら、どうする?」である。
 ゴルフを兼ねたPET検診のため東京から宮崎に来るということが話題になったが、今の状況はどうなのであろうか。PETも完ぺきではない。1センチ以上に「光」れば、「癌」の可能性が高いが、5ミリ以下や炎症が激しいと確定的なことは言えない。年に何回もPET検診するようだど、被曝も無視できないであろう。
 検査診断機器の発展に伴って、医療は凄まじい(?)進歩を遂げている。診断はできるが、治療できないこともしばしばである。放射線の照射装置が不足したり、今や医者が足りない、変な時代である。
 ともあれ、第6感を含めた感覚で「癌」を早期発見できるスーパードクターはいない。われわれ獣医の分野でも状況はほぼ同じで、これが有れば100%確定できるという代物はない。スーパーのレジではないが、「筒」の中を人間や動物が通り抜けると癌はもとより、すべての病名とそのグレードがプリントアウトされる時代が早く到来して欲しいものだ。優れた犬の嗅覚で「癌」の早期発見!何でも良いではないか。
 この話を診察中にしていたら、ある女性獣医師がひと言。「癌で死ななくなったら、何の病気で死ぬんですか。人間、そんなに長生きしてどうなるんですか」。ゥムゥムゥム・・・。
 何もアメリカの真似をする必要もなかろうが、現在のように国(厚労省)や医者、病院任せの「俎板(まないた)の鯉」で有ってはなるまい。個人が全責任を持つ代わりに、少なくとも自由な選択ができる懐の深い医療環境で然るべきだ。 
 
 昨夜は、愚妻の17年の念願である「日向ひょとこ祭り」に行ってきた。宮崎に帰って来てもう17年。「光陰矢の如し」である。「頭」は既に「光」っているから今更どうこうないが、「癌」で「光」るのだけは勘弁願いたいものだ。

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