「体育の日」の由来は、1964年に開催された東京オリンピックの開会式である。昔の体育の日は10月10日と決まっていた。統計的に10日が一番晴天日が多かったからだという。田舎の美郷町南郷区(旧南郷村)では、つい最近までこの日に「村民体育大会」があった。南郷村は大字が4つあり、その地区の代表が競技を争った。真剣勝負そのもので、地区の代表に選考されることは名誉なことでもあった。稲刈りが終わり、農繁期が一息ついた後の大運動会ならぬ祭典であった。日向市などの近隣から、下宿の高校生や親戚も大勢帰省し、大いに賑わっていたのが想い起こされる。
さて今日は「プロ野球秋季教育リーグ」と銘打ったフェニックスリーグの巨人対阪神を観戦に、サンマリンスタジアムへ出かけた。少年野球のユニホームを着た小学生や他県からと思われる家族連れなどの観客が千5百人位だろうか、予想よりは割に多かった。8回の表まで、2時間余り観戦して帰った。試合は3時間を超え、内容からして、小生はやはり高校野球贔屓であるが・・・。
そうは言っても、選手は真剣である。プロで飯が食えるかどうかの瀬戸際の選手ばかりだ。注目の大田泰示(広島出身の東海大相模高卒で去年のドラフト1位指名)も背番号55、3番サードで来期のレギュラーを狙う。4番は背番号66で、同じ東海大相模出身の田中大二郎選手だ。大田が見送りの三振で悔しながらに一塁側ベンチへ戻りかけ、大田と擦れ違うが、相手投手の球の癖などの情報は一切伝えずに、お互い顔を逸らすのが遠目にも明らかに分かる。それもそうであろう、喰うか食われるかなのである。対戦相手よりもチーム内の選手の方が真のライバルなのだから、グランド内には独特な雰囲気が漂うのも無理はない。
2016年のオリンピックはリオデジャネイロで決着した。東京都職員を加えた応援団がコペンハーゲンを蜻蛉返りで往復した。自費とのことだ。結果は残念であったが、その心意気を買いたい。税金が給与の公務員は、野球が格別好きでなくとも家族を連れてシーズンに1度は球場に出向かなくてはなるまい。因みにサンマリン球場の入場料と駐車場料は無料であった。このイベントに如何程の税金が使われているかは知らぬが、ホテルや飲食店関係者は少なからぬ恩恵を直接的に受けている筈で、「一宿一飯」ではないが「観戦と声援」で還元する恩義がある。この教育リーグで育つ選手の何人もが、来春から一軍で活躍するのは間違いないことだ。一人でも多くの観客に応援されることで、「スポーツランド・みやざき」が好印象になることは請け合いだ。
広島と長崎の両市が2020年のオリンピック開催候補地に名乗りを挙げた。テーマは東京の「エコ」から「原爆と平和」になった。いろいろに賛否両論あろうが、スポーツはやはり「生」で見ないと今一感動しないし、鳥肌も立たない。小生が5歳で見た、映りの悪い白黒テレビでの東京オリンピックの感動は、今後もう期待できないのかもしれない。今や、あらゆるスポーツの世界選手権やワールドカップが世界のどこかで開催されている。大気汚染で空気が汚いからと言って、「北京オリンピック」に出場しない世界記録をもつマラソン選手もいた。世界中、どこで開催されても、鮮明な映像で「世界新記録」が見れる時代である。テーマだけで開催地を獲得できるほど、現実は甘く有るまい。
宮崎の観光客増戦略の一つが「スポーツランド」であることは、誰もが認めざるを得ない。その成果を現実のものとするには、関係者の努力だけに頼らず、県民一人ひとりが競技場に足を運び、多くのスポーツのプロ技を直に見て、そして楽しむことだ。昨年の「ワールド・ベースボール・クラシック」の日本代表の宮崎キャンプ。日本全国、津々浦々からファンが殺到したのは記憶に新しい。宮崎に居ながらにして一流選手が見れる。やはり、現場に向かうしかあるまい。選手への「宮崎牛」や「マンゴー」の贈呈はまやかし物で、子ども騙しみたいで、もっと言えば厭らしくさえ感じる。競技場での観戦と声援が「地方興し」の近道であることに、気付く必要がある。
それにしても、オリンピックゲームでの100メートルの世界新記録を直で観戦したいのが、偽らざる本音である。