昨年の末に、ある犬の飼い主さんが他界された。これは、今年になって来院された内儀さんから直接に聞いた話である。
御主人は昨年の梅雨前から体調を崩し、入退院を繰り返していたが、愛犬の「ベンジー」君は、入院の度に食欲がなくなり、年末には体重が1キロも落ちてしまった。御主人は夜中に亡くなられ、明け方に帰宅されたそうだが、玄関に入るなり、御主人の顔をしばらくの間舐めまわしたそうだ。そして、棺の中へも入ろうとして、皆が困ったという。病床の御主人は亡くなる寸前まで、「ベンジー」の名前を呼んでいたという。
数年前、「ニシタチ」の「赤煉瓦」に小生ひとりでふらりと立ち寄ったところ、入口近くのカウンターで、これまたひとりで「ベンジー」君の御主人が、ウイスキーのストレートを飲んでいた。「酒」と「犬」の話題でしばし愉しんだ。「ベンジーが待ってますから、お先に」との言葉が、今となっては懐かしい。
病院へはいつも御主人と一緒だったが、それはもう叶わない。