●偉人という人間は死んだ後まで考えている。吉村昭氏の妻で作家の津村節子氏の談、「亡くなる年の日記の冒頭に、最後の日記になるかもしれないと書いています。・・・遺言にずい分こまごまと自分の葬儀のことから、今後のことまで書き残していきました。なにしろ亡くなったとき、玄関と勝手口に張るようにって、半紙に『弔花御弔問ノ儀ハ故人ノ意志ニヨリ固ク御辞退シマス』という二枚の張り紙まで筆で自分で書いていった人なんです。」(「吉村昭が伝えたかったこと」文春文庫p250・妻の津村節子氏の談)。「2006年7月30日夜、東京都三鷹市の自宅で療養中に、看病していた長女に「死ぬよ」と告げ、みずから点滴の管を抜き、次いで首の静脈に埋め込まれたカテーテルポートも引き抜き、数時間後の7月31日午前2時38分に逝去。」(Wikipediaより)。膵臓癌と舌癌だったという。田端の大竜寺に眠る正岡子規の墓誌は「正岡常規又ノ名ハ処之助又ノ名ハ升又ノ名ハ子規又ノ名ハ獺祭書屋又ノ名ハ竹ノ里人伊予松山ニ生レ東京根津ニ住ス父隼太松山藩御馬廻加番タリ卒ス母大原氏ニ養ハル日本新聞社員タリ明治三十□年□月□日没ス享年三十□月給四十円」。(「坂の上の雲八」p303)。子規がその死期を覚(さと)った時のものだろう。□はそれを物語るもの。ただただ長生きだけを考えている人間にだけはなりたくないものだ。9月13日。
●7日のブエノスアイレスでは「フクイチとその汚染水は100%コントロールできている」。12日は防衛省で開かれた自衛隊高級幹部会合で訓示し、「現実を直視した安全保障政策の立て直しを進めている。意志の力で必ずや実行していく」「現実とかけ離れた建前論に終始し、現場の自衛隊員にしわ寄せを押し付けることはあってはならない。」と発言。おいおい、その場限りの即席のリップサービスではなく、もっと国民にトクトクと説明しなくちゃならんのじゃないか。虚言の「大法螺宰相」の渾名を所望なのなら別だが。9月13日。
●古今東西を問わず、「長」や「賞」の付くものを欲しがる人間は多くとも、それを拒むひとは稀だ。こともあろうに年にひとりか数人しか選ばれないともなれば尚更である。洋画家の熊谷守一(1880-1977)は文化勲章を拒否。藤田嗣治(レオナルド藤田・1886-1968)も文化勲章打診を蹴ったという。1998年に創設された「司馬遼太郎賞」を蹴った男がいる。それも第一回の話だ。「記録文学」のジャンルを開拓した、あの「ポーツマスの旗」の著者の吉村昭(1927-2006)である。吉村氏は史実に徹した人で、坂本竜馬(1835-1867)や秋山真之(1868-1918)を歴史の表舞台に担ぎ出した司馬遼太郎(1923-1996)とはその手法にかなりの隔たりがある。「ポーツマスの旗」は宮崎の「郷土の偉人」である小村寿太郎に焦点をあてた作品である。最近出版された「吉村昭が伝えたかったこと」(文芸春秋編・文春文庫・2013年8月)のなかに取材の裏話がある。「・・・たとえば日露戦争のときの外務大臣に小村寿太郎という人がいたんですね。この人はポーツマス条約を締結するときに日露講和というものをやりましたが、この人のふるさとの宮崎県日南市へ行きましても、まったく何の資料もない。ところが、あの人が着ていたフロックコートだけは見せてもらったんです。小村寿太郎という人は身長が一四三センチくらいだったそうで、その背丈の男の人のフロックコートというと、何か七五三の男の子が着るような感じでした(笑)。資料としてはフロックコートが一つあるだけだったんですが、これでは小説を書けないですよね。でも、歴史的資料を集めるというのはそういうようなものなんです。私が小説を書きましたら、その後、日南市に小村寿太郎記念館という立派な施設ができたんですけれどもね。」とある(p33)。その他にも「吉村昭さんが惹かれた十人」の一人としてpp341~343に小村寿太郎(1855-1911)翁に関した記述がある。吉村昭の作品を読むと、何故に司馬遼太郎賞を頂戴しなかったのかが分る。「俺のはあんたのようないい加減な取材や考証じゃない」と言わんばかりだ。吉村氏の業績が司馬遼太郎賞の辞退うんぬんで過小評価されることはいくらもないが、宮崎にとって「ポーツマスの旗」はありがたいことなのだ。9月12日。
●つい此間(こないだ)夏休みをとった「蓑虫聞多」氏がオリンピック東京招致決定にもかかわらず「朝ドキッ」に登場しないので異変を察していたら、案の上の凶報。親の七光で大手マスコミに職を得たであろう次男坊が、こともあろうに「泥酔路上ごろ寝会社員」のカバンを盗み、近くのコンビニでその盗品キャッシュカードを使い金を引き出そうとしたのは8月13日未明。逮捕は約1カ月後の今日9月11日。1日(回)の「朝ドキッ」だけでギャラが300万円とも500万円とも。年収は10億円とも。片や息子は月収が数十万円。親の「蓑虫聞多」氏は自身の意向か趣味か好みで番組女子アナを決定できる権限がありそうな噂。想像だが夜な夜なも美女軍を傍らに侍らしてのお愉しみであろう。幼少時の息子や娘(2男1女)に費やした時間は如何程であったのだろうか。世界で一番出演時間が長いとのことでギネス入り。有名雄弁アナウンサーに頼らざるを得ないテレビ局。あれだけ世の悪事悪行を非難してきた「蓑虫聞多」氏であるからして、これで「朝ドキッ」は終了だな。滑らかな舌鋒もこれじゃ説得力はゼロだな。振り返って我が身も我が子の躾は及第点かというと、これまた疑わしく怪しいものだが・・・。「手を上げなかったか」「懇悃(こんこん)とワケを諭して聞かせたか」「無礼非礼欠礼に対して真剣に憤怒したか」「無用無機質な機嫌取りはしなかったか」「挨拶など世に出ての最低限のマナーは身に付けさせたか」・・・自問自答して大いに自戒だな。「親の背中を見て育つ」子。親の背を親の一生が終えるまで見ている子。社会への責任も重大だ。我が子の不肖(父親に似ず愚かなこと)を社会の所為には到底できまい、「蓑虫聞多」さんよ。自戒自警!!! 今からでも遅くはない、墓場までの奮闘努力だ。 9月11日。
●理系の人間は本をあまり読まない。獣医大学に入学すると、その日の実習が終れば居酒屋へ、難易度の高い手術が成功すると祝杯を、入院(の犬猫を監視する)当番の間に、学外実習の宿舎でも・・・何かにつけて酒盛りが始まる。今は学内で飲酒することは御法度だが、親仁が学生の時分は派手に横行していた。大学院生になると日曜日も夜昼なく文献を読み、実験計画を立て、実験をこな(熟)し、そして学会発表をして論文を仕上げることの連続。ゆえに、文庫本を持ち歩いている呑兵衛仲間なんぞ皆目いなかった(いたとしたら失敬)。きのう、約半年かかって吉川英治の「三国志」(新潮文庫10巻)と司馬遼太郎の「坂の上の雲」(文春文庫8巻)を完読した。三国志は月末か月はじめに1巻ずつ発刊されるので月末が待ち遠く感じ、9月の10巻で終了した。親仁も昨年の今ごろから過去の生涯にない読書家に変身した。文学書にしても歴史書にしても推理小説にしても、このまま一読もしないいままあの世に行くのに我が人生の貧相を想ったからだ。9月9日。
●ちょっと古いデータだが、特別会計や監理団体なども含めた東京都の財政負債は2004年度末で16兆9,508億円(都民一人当たりの負債額は約135万円)。東京都の2013年度の予算は11兆7642億円(一般会計が6兆2360億円・特別会計が3兆6390億円・公営企業会計が1兆8892億円)で、なんと韓国の国家予算である14兆898億円(2010年で一般会計ベース)に近い。ノルウェーの12兆7232億円(2010年)、サウジアラビアの11兆8206億円(2010年)と肩を並べる財政力である。東京都は中小の一国よりは「力もち」の自治体なのである。因みに国別の予算を見ると、人口が日本の10倍の中国だって日本より劣るし、ロシアなんてのは人口の割に予算が小さく大国とは言えない。以下に国家予算ベスト12を示した。2012年の各国の国家予算額は、アメリカが第1位で歳入が209兆5250億円、歳出が310兆1650億円。第2位が日本で歳が172兆1250億円、歳出が218兆4500億円。第3位が中国で歳入が156兆2300億円、歳出が172兆6350億円。4位がドイツで歳入、歳出とも同額の128兆4350億円。5位がフランスで歳入が113兆9850億円、歳出が123兆9300億円。6位がイギリスで歳入が84兆6515億円、歳出が100兆5550億円。7位がイタリアで歳出が81兆3110億円、歳出が86兆1900億円。8位がブラジルで歳出が77兆4690億円、歳出が71兆9610億円。9位がカナダ で歳出が57兆7405億円、歳出が63兆4780億円。11位がオーストラリアで歳出が43兆8855億円、歳出が44兆9055億円。10位がスペイン で歳出が41兆2335億円、歳出が49兆6655億円。12位がロシアで歳出が35兆1050億円、歳出が35兆1900億円。海産物輸入禁止で東京のオリンピック招致を妨害しようとした韓国よりも、「イスタンブールに決定」と誤報(意図的の可能性大?)した新華社通信の中国よりも、誇れる財政状況の東京。結果として中国の3票と韓国の1票は死票だったが、まさか7年後の大会ボイコットなんぞの騒動にならぬように、隣国同士仲良くしようじゃありませんか。数兆から150兆円(幅が広すぎる)の経済効果をもたらす東京五輪。7年後の日本財政再生には程良い距離(年数)の目標であり、この招致決定が起爆剤(カンフル剤)として最高の天佑である。汚染水はじめ福島復興への「国際公約」も安倍ちゃんの口から発せられた。国主導のもとあらゆる叡智を結集して早急に解決してもらおう。9月8日。
●2020年オリンピックのプレゼンテーション本番の親仁の印象は、一言で「スポーツを通じての、子供を媒体とした平和の継承」がテーマ??? なるほど開催意義が薄い。悪く言えば「江戸時代からの世界に誇れる大都市の、そして近代的ブルジョア国際シティのお国自慢」(やたら外国人が映像に登場した)とも思(おぼ)しき茶番か。それにしても安倍ちゃんの「汚染水問題」に関する質問の回答は、海水や食物の放射性物質の濃度が取るに足らない微量であることを数字をもって強調。具体的な数字をあげたことで、かえって「それ本当?」という不信を増悪した感。対策を含め、タイムスケジュールをもう少し詳細に示して欲しかった。IOC委員以上に日本国民が期待していたのだが(インパクト薄薄で懸念払拭には程遠い演説だった)・・・残念・・・評点は30点。9月8日の午前2時17分(投票まで約90分)。