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隠居獣医の戯言-その1・新田犬-

現在、最も大掛かりで信頼性の高いとされる一般社団法人ペットフード協会の調査によりますと、下図のように、2023年(令和5年)の全国の犬の飼育頭数は約 684万頭、猫の飼育頭数は約 907万頭と推計されています。

猫は横ばいか微増ですが、犬は年々確実に減少しています。犬に関しては、2040年には今の半分まで減少するという推計もあります。

日本人の人口そのものが減少していくのですから、致し方ないかもしれませんが、私が懸念する大きなことは、従来の日本犬の雑種の行く末はどうなるのであろうかという点です。懸念よりも憂慮です。

私が生まれた田舎では「日向奥古新田(ひゅうがおくふるにった)犬」(単に新田犬が一般的)という犬種がおりました。新田という姓の人が猟犬として確立したのです。私の実家でもこの新田犬の子犬をもらって育てたことがあります。とても優秀な犬で、一頭で山に入ってひとり狩りをして数日、帰ってこないということがしばしばでした。ある時、猪に前肢を切られ、その脚は全く麻痺してしまい、最終的には肩関節から断脚せざるを得ませんでした。名前を「ケン」と呼んでいました。ある冬の日中、猟犬に追われた三段角の鹿が家の前に現れました。それを見た3本脚のケンは、その鹿を川に追い込んで頸を咥え、だれの手も借りずに彼だけで仕留めてしまいました。

この新田犬は、宮崎県内だけでなく九州全域の猟師がひっぱりだこで、子犬の譲渡希望が数多でした。実際、私の家でケンの後に来た「マル」という犬は、猟師から強力助っ人としてイノシシ猟に駆り出されていました。レンタル猟犬です。猪が獲れた時には、その一脚を持ち帰りました。マルを知る福岡のハンターから100万円で売ってくれないかと言われましたが、もちろん断りました。マルもひとりで山に入る犬でした。家ではいるかいないか分からないくらいの温厚な犬で、獰猛の正反対の性格でした。

※「本種は、新田光治という猟師がした犬種で、日向犬をベースに他の日本犬やジャーマン・シェパード・ドッグを交配して作出した。主に、イノシシ猟に使われており優秀な犬種として名が知られている。然し、本種も日向犬同様、猟師の減少や他の日本犬や洋犬との雑種化により減少している。本種は、実猟犬として飼育されているが、狩猟に向いていない個体やリタイヤ犬はペットとして飼育されている。(Wikipedia をそのままペースト)」

その他にも猟犬ではありませんが「エス」という雑種もいました。とても利口な犬でした。

かれこれ半世紀以上前のことですが、我が家に居た犬たちはどれも頭の良い「ペットな名猟犬」でした。当時は放し飼いが殆んどでしたから、何か悪いことをすれば(鶏を襲えば一発で)保健所に連れて行かれましたし、他人を咬むような犬は同じ運命でしたから、可哀そうですが問題犬はそのようにして淘汰されたのです。

雑種だから獰猛であるとの言分とは懸け離れた我が家の犬の思い出です。

つづく。(次回は西郷隆盛の「ツン」について・・・です)

下図は「アニドネ」のホームページより引用しました。

犬の飼育頭数

*一般社団法人ペットフード協会

猫の飼育頭数
*一般社団法人ペットフード協会

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