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今週の親仁ギャグ・2020年9月13日(日)~9月19日(土)

●「城の崎にて-前篇-

▼人間の記憶というものほど信用の置けないいい加減なものはないようです。読書の秋・・・・・・書棚に目を凝らしながら一体自分は、自分が読んだ本の内容をどのくらい覚えているのかと思い起こすのですが、主人公の名前も出てこないし、何が名作たる所以なのか・・・・・・などなど忘却の彼方であるものの何と多いことであろうか。年を取った所為もあろうけれども素直にその事実を受け入れていいものやら。

二太郎「主人先生よ、明日は敬老の日じゃありませんか? 田舎の爺ちゃん婆ちゃんになにかプレゼントでもしましたかわん?」

主人先生「そうじゃ昨日からシルバーウイークじゃったの。吾輩は年中無休なんでな、ついつい国民の祝日とやらを忘れがちじゃな。それはそうとな、吾輩が小学校の頃はな、60歳を過ぎるとな、皆村の公民館に集まってお祝い事があるんじゃな。焼酎のミニカップに折詰に紅白まんじゅうが定番じゃった記憶があるな。だから吾輩の祖母はそれを楽しみにしとったぞよ。 (爺さまは臍曲がりの偏屈じゃたからの、死ぬまで参加しなかったがな。)半世紀前のことじゃが、当時の還暦は年寄扱いじゃなくて、じっさい年寄だったのじゃ」

二太郎「そうれじゃ、今60歳の主人先生も半世紀まえなら敬老の日の祝賀の小宴に招待されていたわん?」

主人先生「そういうことだな、うちのスタッフも少しは年寄扱いをしてくれればいいのじゃが、静かに進行する老化現象に冷淡じゃな。こき使われとるわい」

二太郎「そうですか? 近ごろはあまり1階に居る時間が長くないような気がしますわん? ところで主人先生よ、最近はまたまた読書の時間が増えたようですが、どうかしたわん?」

主人先生「そうだな、秋の夜長に新型コロナの巣ごもりじゃからな、時間をもてあましておるからの。自然というか必然じゃろうが読書しか時間を潰せないからの。それがじゃな、この年になって新しいものに挑戦するのも億劫でな。それはな長編を途中で投げ出すのも、これこそ時間の浪費のなにものでもないからな。それでな過去に読んだ本を再読しようと思ったいるのじゃな。ところがじゃな困ったことに線まで引いた形跡があるのにじゃな、内容をほぼ覚えていないから悲しいよな」

二太郎「それこそ昔の敬老会の会員じゃないですか? 具体例はありますわん?」

主人先生「例えばじゃな、文化勲章作家じゃからな当然の文豪先生じゃがな、志賀直哉と云う小説家の作品にな、『城の崎にて』なる名作があるんじゃがな、その中に登場する3種の動物がおるんじゃ。蜂と鼠とイモリなのじゃがな、蟻じゃったかなにじゃったか、すっかり忘れていたからな、これは吾輩にとっては随分の衝撃じゃった。悲しくなったぞな、二太郎君よ」

二太郎「主人先生は2年前の6月に細君と城崎温泉に旅したんじゃないですか?」

つづく。9月19日。

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