●司馬さんの「二十一世紀に生きる君たちへ」には『人間の荘厳さ』というあとがきがあります。書き終えた司馬さんは、「長編小説を書くほどのエネルギーがいりました」と編集者に語ったとされる。推敲に推敲を重ね、命を削る戦いであったのだろう。
『人間の荘厳さ』
「人間は、鎖の一環ですね。はるかな過去から未来にのびてゆく鎖の。人間のすばらしさは、自分のことを、たかが一環かとは悲観的におもわないことです。ふしぎなものですね。たとえば、小さい人たちは、いきいきと伸びてゆこうとしています。少年少女が、いまの一瞬を経験するとき、過去や現在のたれとも無関係な、真新(まっさら)の、自分だけの心の充実だとおもっているのです。荘厳なものですね。
『21世紀に生きる君たちへ』は、そういう荘厳さを感じつつ、書いたのです。つぎの鎖へ、ひとりずつへの手紙として。こればかりは時世時節を超越して不変のものだということを書きました。日本だけでなく、アフリカのムラや、ニューヨークの街にいるこどもにも通じるか、おそらく通じる、と何度も自分に念を押しつつ書きました。」
12月17日。
- 龍三氏とも雑誌会談をもったことで須見氏の逆鱗に触れ、取材内容の一切が使用できなくなったこともその要因と云う。戦国や幕末は「死人に口無し」だが、昭和にはまだ存命の戦争関係者
- ではどうしてそれを実現しなかったのか。調査を始めて1996年の亡くなるまには30年以上の年月があったのにだ。それは1960年代から70年代にかけて元大佐で連隊長であった須見新一郎氏に会っ
- 「風塵抄」や「この国のかたち」など”日本の行く末を憂う”随筆が主となった。その間、司馬さんが何としても書き残したかったのが「ノモンハン」であったことはよく知られている。「
- 司馬遼太郎の小説は、たとえば「翔ぶが如く」や「竜馬がゆく」などの明治維新や幕末、そして戦国時代が中心である。しかし1984~1987年連載の「韃靼疾風録」が最後の小説となった。1971年